インプラントにはさまざまな種類があります。世界中に100社以上あると言われるインプラントメーカーがそれぞれで工夫を凝らし、独自のインプラントを開発しています。
メーカーによってそれぞれ特徴があり専門的には差異がありますが、メジャーなメーカーのものであれば、性能にそれほど差異があるものではないと言われています。同一メーカーでも多様なインプラントを製作しており、適用する本数や部位、術式、患者さんの骨の状態や結合のしやすさ、また、施術者の技術などによっても適合度が異なりますので、一概にどれが優れているとは言えません。
しかし、メーカーによってネジやアバットメントなどの規格が異なりますので、メインテナンスや再治療を受ける際にはメーカーの違いが大きな意味を持って来ます。メーカーが倒産したためメインテナンスを受けることができなくなったり、転居先で同じメーカーのインプラントを取り扱っている歯科医院を見つけられないというトラブルの報告は少なくないようです。
大手メーカーのインプラントは高額である傾向があるため、廉価なインプラントを取り扱っている歯科医院を選ぶこともひとつの選択肢ですが、インプラントは手術後5年、10年と長く付き合って行くものであることを考慮に入れ、担当の歯科医師ともよく相談して判断するようにしましょう。
また、「どのメーカーのものを使っているか」ということより、治療を担当する歯科医師が使用するインプラントについて熟知しているか、また、そのインプラントでの施術に習熟しているかということが大切ですので、カウンセリングを受ける際に、どのようなインプラントを使用するのか、どのようなメリットやデメリットがあるのかを質問してみると良いでしょう。
日本国内でのシェアが高い代表的なインプラントメーカーについてご紹介します。
ほとんどの歯科医院ではこれらのうちのいずれか、または複数のメーカーのインプラントを使用されています。
※インプラントのシェアについては、株式会社アールアンドディ「歯科機器・用品年間(2011年版)」を参考にしています。
スウェーデン/純チタンインプラント
世界で初めてインプラントを歯科医療に臨床応用したブローネマルク博士の近代歯科インプラントを製品展開したインプラントメーカーで、世界で最もインプラントの歴史と臨床実績がある信頼性が高いインプラントメーカーと言われています。
独自の表面形状(タイユナイト)に処理された酸化チタンにより骨成形が促進され、従来のものよりもインプラント埋入後の初期固定性が向上されて、成功率が高まりました。
スイス/純チタンインプラント(主に1回法)
シェアは2位ですが、50年にわたる研究開発から得られた科学的エビデンスや充実した検査体制には信頼が厚く、5年、10年という長期にわたる治療成績の安定性なども実証されているインプラントです。
ストローマンインプラントの表面処理・SLAサーフェイスは、サンドブラスト加工と酸エッチングという2種類の表面処理を施すことで得られた異なる大きさの微細なでこぼこにより骨との結合(オッセオインテグレーション)を促進することができ、短期間での治療が期待できます。
日本/チタン合金(バナジウムフリーチタン合金)インプラント、HAコーティングチタン合金インプラント
京セラと神戸製鋼所が統合したメーカーで日本では最も歴史と実績があり、国産インプラントでは最大シェアを誇っています。(10年以上、年間約6万本の使用)
海外のメーカーと比べると歴史や実績の面で劣りますが、通常のチタンインプラントの他、ハイドロキシアパタイトを表面処理して生体的な強固な結合(バイオインテグレーション)を得るHAインプラントの開発にも力を入れ、品質の改善にも努めて信頼を得ています。
アメリカ/HAコーティングチタンインプラント
人工関節や整形外科分野のインプラントで世界的な実績のあるジマー社を母体に持ち、歯科用インプラントの開発を専門とするメーカー(ジマーデンタル社)で、HAコーティングインプラントで大きなシェアを持っていたカルシテック社を吸収しました。
スプラインインプラントは、インプラント体とアバットメントの連結部分にジンマー社独自のスプライン構造を持つチタンインプラントで、表面には結晶率が97%のクリスタルラインHAがコーティングされています。
骨とHAの界面にカルシウムを沈着させて生体的に強固に骨と結合する性質を持ち、「はがれやすい」と言われているHAの剥離などのトラブルの報告がほとんどあがっていないという実績を持っています。
即時荷重など、短期間でのインプラント治療を行う際に多く用いられているようです。
スウェーデン/チタンインプラント
インプラントメーカーとしては後発に当たりますが、インプラント上部の微細なねじ構造(マイクロスレッド)により辺縁骨の吸収を軽減できる、また、アバットメントとインプラント体の境目の独特の溝(コネクティブカウンター)により感染リスクの軽減が期待できるなどのメリットがあります。
日本/HAコーティングチタンインプラント(主に1回法)
国産・廉価・早期骨結合インプラントとしてシェアを伸ばし、国産インプラントシェア2位となったインプラントメーカーです。
再結晶化HAコーティングによる早期骨結合により、1〜2カ月での結合症例の報告も多数あげられています。また、インプラント体とアバットメント(土台)が一体化した1回法が主流のため、骨と結合した後にアバットメントを取りつけるために歯肉を切開する再手術が必要なく、患者さんへの負担が少ないインプラントとして人気があります。
歴史が浅く臨床実績が少ないこと、長期臨床の報告がないこと、また、1回法という特性上複雑なケースには対応しにくいなどの理由から導入を見合わせている歯科医師も少なくないようですが、現状では大きなトラブルの報告はなく予後も良いケースが多いようです。