現時点ではインプラントは標榜科目として認められていないため、厚生労働省により広告が可能と認められた「専門医」制度は存在しません。しかし、インプラント治療の質の向上や、安全性・信頼性を客観的に評価することを目的として各学会で独自の基準を定め、認定資格制度を確立しています。
中には、数日間座学を受けるだけで得られる資格、特定のメーカーの製品を使用する歯科医師に限定して付与される資格等もあるようですので、認定資格を有していることが無条件で「名医」「良いインプラント歯科医師」であることを保証することにはなりませんが、治療実績を重視し、専門性に特化した実績を重ねて来たことに対して評価を行っている場合は、一定水準以上の技術を持っているインプラントドクター選びのひとつの基準となるのではないでしょうか。
「資格を持っているか」よりも、「どのような基準で認定されている資格なのか」ということを理解し、比較した上で参考になさってください。
※ここでは代表的な学会の制度のみご紹介しています(順不同)。
日本口腔インプラント学会は12,600人の会員が所属(※)している日本最大のインプラント学会で、口腔インプラント治療に関する研究を推進し、学術の発展に寄与し、より安全で安心な口腔インプラント治療を国民に提供することを目的としています。
そのため、口腔インプラント治療指針やインプラントチェックリストを作成してトラブル防止に努めるとともに、口腔インプラント治療の教育・臨床技術の向上を図り、社会・国民へも適切な口腔インプラント治療に関するわかり易い情報を提供する啓蒙活動にも取り組んでいます。
※2012年6月17日現在 日本口腔インプラント学会公表
日本口腔インプラント学会では、口腔インプラント学に関わる広い学識と高度な専門的技能を有する歯科医師の養成を図り、口腔インプラント医療の発展と向上並びに国民の福祉に貢献することを目的として、専門医、認証医、インプラント専門衛生士、インプラント専門歯科技工士の資格を設けています。
ここでは、歯科医師の資格である専門医・認定医についてのみご紹介します。
正会員歴2年以上で、インプラントの知識と技術を有し、認定資格条件を満たしたうえで申請を行ない、認定される必要があります。
参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会認定JSOI認証医制度規程第3条
JSOI認証医を申請する者は、申請時に下記の各号すべてに該当することを要する。
正会員歴5年以上で、インプラントの知識と技術を有し、条件を満たしたうえで試験に合格した者が認定を受けることができます。標準的な安全・安心な口腔インプラント治療が行えるドクターであることを目指しており、取得時、また5年ごとの更新時の審査には高い基準が設定されています。
参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会専門医制度規程 第8条
口腔インプラント専門医を申請する者は、 申請時に 下記の各号全てに該当することを要する。
2、 前項にかかわらず、委員会が申請資格を有すると認めた者。
ICOI(International Colegress of Oral Implantologists/国際口腔インプラント学会)は世界最大のインプラント歯科医の学会で、国際的な評価が定着しています。
国際的なネットワークを生かし、的確かつ最新の歯科医療情報と研修の機会を会員に提供することで、世界最大のインプラント教育・研究機関としての役割も果たしています。
ICOIに所属されている先生は、プロフェッショナルなインプラント治療を熟知し、臨床に生かしています。
認定資格にはICOI Fellowship(フェローシップ/ICOI認定医)・IPS Mastership(マスターシップ/ICOIインプラント補綴認定医)・ICOI Diplomate(ディプロマット/ICOI指導医)があり、各国に設置された資格審査委員会による世界標準の厳正な審査(書類・面接・英文筆記試験)を経て、インプラント治療の確かな手技や知識、豊富な経験を持った歯科医師・歯科医療従事者に授与されます。
また、すべての資格は3〜5年ごとの更新制度があり、常に最新の情報に接するとともに技能の向上をはかり、資格取得後も積極的に研鑽を積むことが義務付けられています。
参考:ICOI国際資格認定制度 認定資格についてのご紹介(日本語版)
インプラント治療において一定の知識・技術を有しており、適切な診断と治療を行うことのできる歯科医師、歯科技工士。
補てつ治療を中心に行う歯科医師または、歯科技工士が取得している資格。この資格取得には、Fellowshipよりも高度な条件が求められる。
補てつと外科治療を行う歯科医師を対象にしたICOIの最上位資格であり、より豊富な臨床経験と研鑽を積んでいる歯科医師。
DGZIは、ヨーロッパでもっとも歴史がある、ドイツのインプラント学会です。資格審査が厳密で信頼性が高く、ICOIとならんで国際的な評価が定着しています。
日本では国際口腔インプラント学会(ISOI)がDGZIと提携し、DGZIの日本支部(DGZI Japan)を併設しています。
認定制度はDGZIドイツ本部が認定するものとISOI及びDGZI日本支部が認定するものがあります。
特に、ヨーロッパで最大最古の歴史を持つインプラント学会「DGZI ドイツ本部」からの認定は、インプラント専門医として、大きな信頼と社会的な評価を得る事となります。
参考:認定制度について
ISOI及びDGZI日本支部が認定資格制度には、歯科衛生士・歯科技工士・インプラントコーディネーターを対象とするものもありますが、ここでは歯科医師の資格(認定医・指導医)のみご紹介します。
※ISOIの推薦を受けた者がドイツ本国で受験。DGZI Japan 指導医の資格を有することが条件となります。
※ISOIに顕著な功績が認められ、理事会で承認された者はExpert Implantology認定試験の受験が認められる。