歯を失ってしまう二大原因が虫歯と歯周病です。特に歯周病については、厚生労働省の調査によれば、日本人の成人の8割には何らかの歯周病の症状(歯肉が腫れる、プロービングで出血するなど)が見られたという結果が出ています。つまり、インプラントを入れようと思っている方のほとんどは、程度の差こそあれ、歯周病によるリスクを考えなければならないということです。
重度の歯周病の方であっても、プラークコントロールをしっかりと行い、口腔内が清潔に保たれている状態であれば、インプラントの成功率は歯周病ではない方と差がない(上顎で98%、下顎で97%の成功率)と言う研究論文が発表されています。
ただし、歯周病ではない方と全く同じ条件で治療を受けられ、予後のリスクも同程度ということではありません。プラークコントロールが十分にできていない方はインプラント周囲炎にかかるリスクが高くなりますし、プラークコントロールは十分でも、歯周病が進行して骨の状態が良くない場合はインプラントを入れられないこともあります。
感染症のリスクの高さなどから、歯周病の方にはインプラント手術をおすすめしないという歯医者さんもいますので、「歯周病でも大丈夫です」という言葉を過信せずに、リスクについてもきちんと説明を受けるようにしましょう。
歯周病は進行するとあごの骨が溶け、歯が抜け落ちてしまう感染症です。歯周病で歯が抜けてしまったからと言って、すぐにインプラントを埋入してしまうと、結局はインプラントの歯周病(インプラント周囲炎)を起こしてインプラントが抜け落ちてしまうことになります。
歯周病の症状がある方は、まず歯周病の治療から始めます。歯周病が改善されない限りはインプラント治療はできないと考えた方が良いでしょう。
歯周病は「完治」することはありません。また、歯周病の原因菌を完全に殺して口の中を無菌状態にすることはできませんので、一度歯周病になった方は、再び歯周病になる可能性が非常に高いと言われています。
歯周病になりやすい方はインプラント周囲炎にもなりやすく、せっかくインプラントを入れても数年で失ってしまうことにもなりかねません。
歯周病ではない方でも、インプラント埋入後はメインテナンスを十分に行うことが必要です。歯周病にかかったことがある方は、再発を防ぐためにさらなる注意が必要です。
歯周病が進行すると、歯を支えている骨が溶けてなくなってしまいます。骨がなくなってインプラントを支えられるだけの厚さ(幅)や高さが足りなければ、インプラントを入れても噛む力に耐えられずに抜けてしまったり、折れてしまったりすることがあります。
骨量が足りない場合は、骨移植やGBRなどの組織再生療法で骨造成を行い、十分な骨の厚みと高さが得られてからインプラント手術を行ないます。
しかし骨造成には数ヵ月を要し全体の治療期間が長くなること、体質によっては骨造成の効果が得られないこともあるというデメリットもあります。また、骨造成手術を行っている歯科医院は限られますので、いくつかの歯科医院に相談してみると良いでしょう。
画像提供歯科医院:吉祥寺セントラルクリニック
歯周病が進行すると歯がぐらぐらして動き、治療が終わっても元の位置に戻らないことがあります。
このようなケースでは、
といった理由で、そのままではインプラントを入れられないことがありますので、先に矯正治療による歯列や咬み合わせの改善を行なうことがあります。
もちろん矯正治療を行うのは、歯周病の治療が完了していることが前提になります。