骨の垂直的な厚み(高さ・深さ)が十分でも、水平的な厚み(幅)が足りないことがあります。幅が足りない場合にはGBRなどの骨移植で骨造成することもありますが、骨の柔軟性を利用して幅を割り広げる治療が行われることもあります。(スプリッティング法)
約60%がタンパク質でできている骨は、強く握ると手の痕がつくほどの伸縮性や柔軟性を持っているため、切れ目を入れて押し広げることができます。スプリッティングは、小さな穴や切れ目から少しずつ骨を割り広げ、インプラントの直径近くまで拡大して行く手術です。
一般的なインプラント手術は一般的なもので直径約4mmのインプラント体を埋入するため、広範囲の歯肉を切開して、骨をドリルで削って3mm程度の穴を開けなければなりませんが、スプリッティングで開ける穴の大きさは1mm〜2mm程度と比較的小さく、歯肉を切開する範囲も少なくて済むため、外科手術での患者さんへの負担が軽減されます。
押し広げられた骨は、その伸縮性によって元に戻ろうとします。インプラントを埋入すると骨の隙間にしっかりと挟まれて安定し、初期固定が良くなります。
骨の柔軟性・伸縮性を利用する埋入法のため、骨が硬い方や、比較的骨が硬い下顎には適しないことがあります。
小さな器具から大きな器具に取り換えながら、ゆっくりと少しずつ骨を押し広げて行くため、ドリルを使う埋入手術よりも手術時間が長くなる場合があります。
骨を削らずに広げて行うインプラント治療にはさまざまなものがありますが、基本的には、器具を使って少しずつ骨を割り広げて得た隙間にインプラントを埋め込む治療です。
インプラントを埋入する部分の骨に小さな穴を開け、ダイレーターという棒状の器具を押し込んで広げます。棒の代わりにネジ状の器具を使用することもありますが、細い径のものから徐々に太い物に取り換え、少しずつ歯槽骨を拡大します。
インプラントを埋入するのに必要な厚みが得られたら、広げた隙間にインプラントを埋め入れます。
サイトダイレーティングは、骨の厚みが4mm程度以上ある上顎前歯の治療に適しています。極端に薄い方(4mm未満)の場合は、スプリットクレストで広げます。
骨の厚みが4mm未満と骨が極端に薄い方は、ノミのような楔形の器具で押し広げるスプリットクレストが適応されます。スプリットクレストはダイレーターよりも細い器具を使用し、状態を確認しながら少しずつ慎重に骨を分割して行きます。
できた隙間にインプラントを埋入しますが、分割しただけでは骨の量が不足していることが多く、インプラントと骨の間に骨造成材を詰めて骨造成を行うこともあります。
従来の方法では、ノミをハンマー状の器具で叩いて骨を割り広げていましたが、最近では超音波振動を利用して、患者さんへの負担(音や振動)も軽減しながら広げることができるようになっています。
画像提供歯科医院:吉祥寺セントラルクリニック