天然歯の代わりに人工歯を埋め込む技術は、古くは古代文明にまで遡ると言われています。現代の人工歯根とは違う用途(祭祀など)で使用されていたのかもしれませんが、石器に使われる黒曜石やヒスイ、貝殻、象牙、鉄などが歯の代わりに埋め込まれている人骨が各地で発見されています。
その後もさまざまなインプラントが開発され、金や陶器製のインプラントも作られていたようですが、実用には遠かったようです。
1913年にグリーンフィールドが円筒型のインプラントを開発しました。
これはあごの骨に埋めるタイプの骨内インプラントで、近代インプラントの祖とも言われています。
1930年代にはスクリュータイプのインプラントが作られました。
また、1938年にアメリカのミュラーが骨膜下インプラント(こつまくかいんぷらんと)を用い始めました。骨膜下インプラントとは、現在のインプラントのように骨の中に埋め込むのではなく、骨の上(骨膜下)にあごの骨の形に合わせた金属フレームを被せるタイプのインプラントです。
1940年代にはらせん状スクリュータイプのインプラントも開発され、広くインプラント治療が行われるようになりました。
しかしインプラントにはコバルトクロムなど生体になじみにくい素材が使用されており、予後が悪いことから、広い普及には至らなかったようです。
1952年、スウェーデンのブローネマルク教授が、チタンが骨と結合(オッセオインテグレーション)することを発見し、インプラントの臨床は劇的な進化を遂げました。
ブローネマルク教授は12年間の実験や検証を経て、1965年に、現在主流となっているチタン製インプラントでの最初の治療を行いました。その後更に15年の臨床研究をおこない、十分な臨床結果を得てから、1981年に学術論文を発表して公表しました。
その後チタンインプラントの検証が各地で繰り返され、高い成功率と良好な予後を得られるインプラントが広く普及されるようになりました。
ちなみに、ブローネマルク教授の始めての患者さんは、40年以上問題なく使用されたということです。
ごく最近まで主流だったインプラントです。
薄い板状のインプラントで、骨に溝を作って埋め込みます。非常に薄く比較的骨の幅が狭い部分でも入れることができますが、チタン製ではないためインプラントの周りを軟組織が包んで骨と密着しなくなったり、インプラントの一部にのみ過度な力が加わってしまうために骨が吸収されたり、抜けやすくなるという欠点があり、トラブルも多かったようです。1970年頃に開発されましたが、最近ではほとんど使用されていません。
現在主流となっているタイプのインプラントです。
チタン製という特性から定着率が格段に高くなったこと、噛む力が均等に加わるため歯周組織へのダメージが軽減されたこと、また、ブレードタイプと比べて埋入するための穴を小さくすることができるというメリットがあります。
あごの骨の幅が薄いなど、スクリュータイプを埋入するのが難しい場合は、ネジがないシリンダータイプを使用することがあります。
ネジのない円筒型で、スクリュータイプと同じく現在主流のインプラントです。
スクリュータイプを入れるのが難しい狭い部位への埋入に用いることができますが、ネジがない(表面積が狭い)分、初期の定着率がやや劣ります。そのため、2回法インプラントに適しています。