インプラント手術には「1回法」と「2回法」があります。
その名前の通り、1回の手術でアバットメントまで取りつけてしまうか、インプラント体の埋入とアバットメントの取りつけのために2回手術を行うかという違いがあります。 手術回数が少ない方が良い治療法のように思えますが、回数が少ないために生じるデメリットもあり、安易に優劣をつけることはできません。大切なのは、十分な技術と経験を有したドクターが、患者さんに最適と考えるインプラントを最善の方法で施術することです。ご自分が受ける治療法に不安がある場合は、担当のドクターからしっかりと説明を受けるようにしましょう。
代表的なインプラント:ブローネマルク(スウェーデン)、ノーベル(スウェーデン)、京セラPOI(日本)
1回目の手術ではインプラント体のみ埋入して歯肉を閉じ、骨と結合するのを待ってから2回目の手術を行い、歯肉を切り開いてアバットメント(人工歯の土台)をインプラント体に取りつける治療法です。
骨が結合した時にはインプラントが歯肉の中に埋まっているのが特徴です。
2回法で埋入するインプラントは、インプラント体とアバットメントが別パーツで構成されているツーピースインプラントです。ブローネマルク、ノーベル、京セラPOIなど、日本で大きなシェアを占めているインプラントの多くは、2回法のツーピースタイプです。
インプラントを完全に歯肉の下に埋めてしまうため、結合を待つ間の感染リスクがほとんどありません。
感染リスクが高まると失敗率も高まると言われているインプラント治療において2回法の方が有利と考えられている理由のひとつは、感染リスクの低さです。
インプラントに直接歯や食べ物が触れることがありませんので、インプラントに無理な力が加わるリスクが低くなります。埋入直後にインプラントが動いてしまうと、生体が拒絶反応を起こして骨と結合しなくなるリスクが高まることから、咬合圧(噛む力)の影響を受けにくい2回法が有利と考えられています。
2回法インプラントの最大のデメリットは、埋入のためとアバットメント取りつけのための2回の手術が必要となることです。親知らずの抜歯程度であっても、外科手術による身体への負担は少ない方が良いという考えから、手術回数の少ない1回法を主として行うドクターも存在します。
代表的なインプラント:ストローマン(スイス)、AQB(日本)
手術が1回だけで済む手術法です。インプラント体と土台(アバットメント)が一体化したインプラントを埋入する場合と、埋入したインプラントに仮のアバットメントや蓋を取りつけて結合を待つ場合があります。(多くのケースでは一体型のインプラントを使用しますので、ワンピースインプラント法と言われることもあります)
1回法の特徴は、仮のアバットメントや蓋の一部を口腔内に露出させたまま歯肉を縫合し、インプラントが新しい骨や歯肉で埋まらないようにすることです。(仮のアバットメントや蓋の一部がお口の中に見えています)そのおかげで、結合後に再び手術を行わなくても、インプラントに正式なアバットメントを取りつけることができるのです。
1回法インプラントの最大のメリットは、手術による身体的負担を軽減できることです。MI(Minimal Intervention/最小の侵襲)の理念に基づいて、1回法インプラントを積極的に取り入れる歯科医院が増えています。
どの歯科医院でも取り扱っているというわけではありませんが、手術が不安な方や、痛みに弱い方は、1回法インプラントが適用できないかどうか相談してみるのも良いのではないでしょうか。
インプラントの一部が露出しているため歯垢などの汚れがたまりやすく、2回法インプラントよりも感染リスクが高くなります。
骨造成を行うなど、通常以上に感染に注意しなければならないケースでは、1回法を行わないことがあります。
(歯科医院によっては、1回法でも骨造成手術を併用する場合があります)
先端が口腔内に露出しているため、噛み併せたときに反対側の歯が当たったり、食事の際に食べ物が触れたりすることで、インプラントに過度な力がかかってしまうことがあります。
インプラントが動いてしまうほどの大きな力がかかってしまった場合は、骨との結合が阻害され、失敗のリスクが高まるというデメリットがあります。